平成29年度木材コーディネート研修会第1回

2018年3月02日
木材コーディネート研究会では、今年度(平成29年8月から平成30年7月)の研究会テーマと
具体的な研修内容について議論を重ねてきました。

今年度は「木材コーディネーターによる森林経営支援はどうあるべきか」をテーマとし、
2回の座学と1回の視察研修を行うことといたしました。

平成29年度木材コーディネート研修会第1回が開催されましたのでレポートいたします。


【研修会概要】

日時 :2018年2月24日(土) 13:00 ~ 17:00
会場 :近畿中国森林管理局
運営 :木材コーディネート研究会平成29年度世話役
テーマ: 「森林経営計画策定の目的・現状・課題
    ~森林所有者が持つべき森林経営のビジョン~」
情報提供:山田真弓(MORI-IKU代表、静岡県浜松市、平成27年度受講生)
     井上淳二(きまま工房・木楽里主催、埼玉県飯能市、平成27年度受講生)
内容 :
   12:30 受付開始
   13:00 はじめに
   13:15 講義
      「森林経営計画の実際~本来の目的と現状について」 山田真弓
   14:15 事例報告
      「西川林業地で取り組む計画策定に向けて予測される課題」 井上淳二
   15:15 グループワーク
      「森林所有者は計画に何を求めるか・策定のための課題解決」
   17:00 おわりに

【研修会内容】

第1回目では、木材コーディネート領域の最上流ともいえる森林管理と森林経営に焦点をあて、木材生産に影響を及ぼしている森林経営計画制度をテーマに、講義・事例報告・グループディスカッションを行い、森林所有者が持つべき森林経営計画のビジョンについてまとめていきました。

講義:「森林経営計画の実際~本来の目的と現状について」

本日講義を担当する山田さんは、MORI-IKUを立ち上げ木育活動を進める傍ら、森林組合や民間事業体、個人林業家などの森林経営計画の策定や運用支援に従事されています。

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まず、森林経営計画制度について認定要件や必要な書類、作成手順について説明がありました。
森林の所有者や森林の情報は、地方行政機関が管理する森林簿にあるものですが、実体とかけ離れているとのことでした。
あてにならない森林簿とどのように折り合いをつけて、森林経営計画を作成すればいいのか、現場の並々ならぬ努力が想像されます。

次に、森林所有者にとって森林経営計画制度についてご紹介いただきました。
浜松市が支援して、天竜という有名林業地はFSC認証材を生産しています。
経営計画を作成することがFSC認証を受ける要件でもあり、作成しなければFSC認証材の販路に乗せられなくなります。
個人所有者は策定して実行することが難しく、森林組合に委託すると施業の自由度がなくなり不便と感じているとのこと。
計画をわざわざ作成するのに、施行の自由度が少ないと感じていることに課題が潜んでいるようです。

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次に、プランナーにとっての森林経営計画制度について感想を頂きました。
森林経営計画を作成すると補助金が支給されるのですが、補助金目当ての計画になっていて、市場を考慮しない大量供給に陥っているとのこと。経営である以上、林業を持続できるだけの対価は木材生産から必要だが、計画的な素材生産・品質重視の視点が欠落しているとのこと。
森林経営を持続させるための販売計画が、森林所有者にとって必要だ、と現場でも上がっているのですね。


事例報告:「西川林業地で取り組む計画策定に向けて予測される課題」

本日事例を紹介していただく井上さんは、西川林業地で代々続く林業家で、森林教育活動を熱心に進められてきました。また、愛猫にスギの学術名から名前を付けたり、木工房・木楽里を主催され、かんなくずよりアクセサリーを考案して広めるなど、多彩な活動を展開されています。

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まず、森林経営計画を策定する目的について、森林認証が取得しやすく自治体の支援制度を受けやすいと説明していただきました。
森林認証を取得した木材は、内装業から高く関心が寄せられているそうです。

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次に、森林経営計画策定について感じておられる課題など説明していただきました。
森林簿や森林基本図と森林の実情が合っていないことが課題だそうです。西川林業地は代々注文材を生産してきたので、土地の境界や立木情報の更新を進めて実情を把握して、ニーズに応える材を提供できるようにされているそうです。
また、個人所有林が点在されているため、森林経営計画の要件を満たすために隣接する所有者と共同で作成する必要があるとのこと。
その場合、路網を整備するため、隣接する土地の管理が必要になるなど、計画の実行についても不安があるそうです。


グループワーク:「森林所有者は計画に何を求めるか-策定のための課題解決」

5つのグループに分かれ、講義や事例報告から生じた疑問点をお互いに解消します。
その中で解消できなかった質問を全員と共有し、回答できる方よりご説明いただきました。

主な質問は次の通り
「不正確な森林簿情報に基づいた計画が認められているのか?更新はされないのか?」
・そもそも森林簿は森林状況を把握するためのもので経営を目的としていないため、管理する情報が十分ではない
・森林経営者や森林組合の報告により更新は続けている。(行政主導での更新は行っていない)

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「森林経営計画制度は誰のためか?何のためにあるのか?」
・林業で採算がとれるようになることを目指して制定されたことになっている。

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次に、森林所有者に利益を生むための森林経営計画とはどのようにあるべきか、そのために「森林経営計画作りが森林所有者にもたらすメリット」をまとめました。
これが見えれば、木材コーディネーターがどのように支援していくべきか指針が見えてきます。

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「森林の現状把握ができる」
「森林経営計画認定に必要とされるレベルにとどまらない、価値の高い木材生産や森林管理・森林経営の長期的ビジョンを持つための情報収集ができる」
「森林資産(境界、土地(=不動産)、木材(=動産))の管理ができる」
「小面積森林を束ねて一括で森林経営(=森林管理・資源利用)ができる」

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森林経営計画の作成にも、木材コーディネーターの出番が求められそうです。


【次回以降の研修会】

第2回木材コーディネート研修会
日時 :3月10日(土) 13:00 ~ 17:00
会場 :近畿中国森林管理局
講師 :安田哲也(NPO法人サウンドウッズ代表、兵庫県、平成29年度受講生)
    戸田昌志(戸田材木店経営、大阪府、平成26年度受講生)
    能口秀一(有限会社ウッズ代表、兵庫県、木材コーディネート基礎講座講師)
内容 :「地域材」ブランドに頼らない「生産者ブランド」は可能か?

第3回木材コーディネート研究会
日時 :4月21日(土) 13:00 ~ 17:00、4月22日(日) 9:00 ~ 12:00
集合 :静岡県立森林公園森の家
案内 :山田真弓(MORI-IKU、静岡県、平成27年度受講生)
受入 :天竜林研グループ
内容 :具体的な森林管理および木材販売事例に学ぶ(静岡県天竜地域編)