森の達人03 生物多様性かんさい代表・宮川五十雄さん

2011年6月15日

第3回目の対談は、森の都研究所代表で、生物多様性かんさいの代表世話人も務める
宮川五十雄さんと木材コーディネーター能口秀一との対談です。
2010年12月4日に株式会社吉住工務店こだま館(丹波市)にて収録しました。

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宮川五十雄(みやがわいそお)
森の都研究所代表、生物多様性かんさい代表世話人
生態系調査、企業の環境・CSR活動支援、環境人材育成などを手がけ、
現在は生態系や地球環境の問題に対する関心喚起、啓発のための活動を展開。
丹波市在住。



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能口:今日は「森を聴く」ということで、「森の都研究所」の宮川さんと丹波市市島町の神池寺というお寺の山を散策しました。 宮川さんは「生物多様性かんさい」代表としてもご活躍されていますが、宮川さんのお仕事の内容を、少しご紹介いただきたいなと思います。

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○関西も重要な地域

宮川:まず、森都研究所というのはNPOでして、大阪の十三にあるカフェスロー大阪というカフェの若いスタッフたちと一緒にですね、新しい'森を意識した都会暮らし'や、'森を意識した田舎暮らし'を考えたいということで、いろいろ遊びながら実験をするようなグループとして動いております。
「生物多様性かんさい」という関西のNPOの連絡会を作るときは、都市と田舎を結びながら生物多様性保全を目指すNPOとして参加しました。
この団体が何をしているところかをご紹介するために、近畿環境パートナーシップオフィス(以下、通称の「きんき環境館」)の出している冊子を持ってきました。
きんき環境館は環境省が近畿地方の様々な主体の人と対話をするために置いた組織で、大阪府民環境会議というNPO組織が運営に当たっています。
先般の名古屋での生物多様性条約の国際会議の前にきんき環境館から、生物多様性を分かりやすく解説してもらえないか、と言われて、そこの出している冊子に解説文を載せています。

生物多様性条約は、国際条約でアメリカとバチカンとアンドラの3国以外の全てが参加している珍しい条約で、世界で一番加盟国数の多い条約なんです。
生物多様性条約と聞くと、みなさんはアフリカだとか熱帯雨林だとか、あるいはサンゴ礁のことかなと思うかもしれませんが、生物多様性、生態系の保全というのは面積を積み上げるしかないんですね。
生物多様性、生態系の保全を考える上で日本も非常に重要な地域で、関西も重要な地域なんです。
世界で34箇所、生物多様性が急速に減少、衰退している重要な地域が選ばれた生物多様性版の「ホットスポット」に、日本列島はまるまる選ばれている。
アフリカとかギニアとか、そういうところと一緒に日本列島が選ばれている。
その基準が、その地域に生息している植物の4分の1ぐらいが危機にさらされているということで、それに日本が当てはまるんですね。

関西地域にも、そういう危機にさらされている希少種と呼ばれるものがありますし、普通の里山がこれだけ荒れているのも皆さんよくお分かりかと思います。
そこで、じゃあどうしたらいいかというのを標準語で書いても関西の人に響かないんですね。
なので、比較的、標準的に大阪近辺で話されている関西弁で解説を書いたものが、「関西人だからできる7つのエーコと~生物多様性のために」です。
解説の中では、地元で取れたうまいもんをもっともっと食べましょうという地産地消のことや、子供と一緒に自然の中へもっと出てないとヤバイですよ等について書いてます。
こういうものを含めた普及啓発の工夫を「生物多様性かんさい」というグループでやっています。
このグループは、実は意外とでかいところでですね、日本野鳥の会大阪さんのような老舗の団体とも一緒に考えてやってます。
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能口:生物多様性条約は国際条約ですが、それぞれの国が活動するためには、その地域、エリアごとにいる人が考えて動かないといけない状況だと思います。

この木材コーディネーター養成講座でも、森との関わりを林産業だけではなくて、そういった多様性との関係についても知識を持って取り掛かるべきだろうと思っています
ところで、私も宮川さんも、この地域の出身ではなくて、Iターンで来たということなのですが、宮川さんはどちらからですか。
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宮川:直前に住んでいたのは西宮ですけれども、もともと私のルーツというか、精神風土に影響を与えているのは、おそらく大阪の能勢地方に住んでいたことです。
それが、なぜ今丹波に住んでいるのかということにもちょっと繋がってくるんですけど、肌合いが合うんです、空気感が。
私は仕事として、一時期、環境アセスメントの生態系調査をしていたんですが、その頃は九州から愛知くらいまで、ほとんど毎週各地の里山を巡っていました。
例えば、南は和歌山や河内長野あたりは、いいところなんですけど、私には乾燥して埃っぽく感じる。
逆に北の方はというと、冬の湿度は気持ちがいいんですけど夏の暑さが無理だ。 富山あたりの暑さになると、自分は住めない。
やっぱり自分の育ったところの空気感って、意外と体にしみこんでいるんだなって思ったり。
それが、なんとなく肌合いが合うのが二箇所あったんですが、滋賀の湖西のほうと丹波で。
結果的に、縁があって丹波に来たんです。
なんか、そういう生物的な肌感覚というか、そういうものって意外にあるんじゃないかなとは思うんです。


能口:森の価値を作り出すために、多様性っていうのは重要なことだと思うのですが、森の魅力というか、恵みを生かすということについて、少しお話いただけますか。


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○山が食わせてくれる
宮川:私が学生上がりの頃に聞いて印象的だった話で、作家の塩野米松さんがおっしゃっていたんですが、昔は東北の方へ行くと田んぼ等の収量が北に行くほど悪かったわけですよね。
戦後の大飢饉でしたっけ、東北地方がひどい冷害に遭って飢えに直面した時、仙台の街に近いところほど飢えた。
奥に行くほど田んぼの質は悪くなるのに、そっちの方が飢えや病気などで死ぬ人が少なかった。
何故かというと、山が食わしてくれたという話だそうです。山が食わしてくれるっていう状態というのは二つの要素が必要で、山が豊かで気候変動が多少あっても何かは実る状態であるというのがひとつです。
もうひとつは、何かが実っているのを実りとして収穫できる文化がちゃんとあるかどうか。
丹波で山の価値を総合的に生かすことを考えるとすると、今無いのは山の価値を総合的に受け取る仕組みです。そういう文化が途絶えているに近いですね。
昔は村の山でホウノキを伐って鎌の柄を作ったり、何を伐って何を作ったとか、そういう話を実体験として話せる世代がまだかろうじて生きているわけですけど、そういう方々から私らの世代へ受け取っておかないといけない文化があるだろうと思います。
また、これだけ情報が全国に廻っている時代なので、よその地域の知恵も上手く取り込めるようにはなったというのは感じます。
それを含めて丹波も、なにかが採れないときには山に食わしてもらうという、そういう文化、風土を創り得るんじゃないかなと思います。
この辺りは日本海側の生き物と、太平洋側の生き物が重なっている地域で、せめぎ合っている地域なんですね。

例えば、私は春から初夏にかけていろんな種類の木いちごを摘むんですけど、能勢より種類が多いんです。
能勢は大阪の中では一番木いちごの種類が多いところなんですけれども、そこよりも多いのが丹波。能勢の方で5種類か6種類かなっていうところ、こっちは7、8種類あるんです。
それだけでも違うので、上手くやれば丹波には非常に可能性を感じますね。


能口:山を活かす文化というのが一旦途切れた部分はあると思うので、それを次の世代がきちんと受け取っていくために、今日のようなワークショップなりで受け継いでいける部分っていうのもあると思うのですよね。
もっとこのようなことを推進するべきで、山にある資源を見て最終的な形がイメージできる方や、食べるものであったり、加工して道具になったりというものをイメージして自分で作れる方が途絶えてしまうと森の文化や価値が下がってしまいます。
新たな木の使い方も、今の時代だからこそというのもあると思うのですが、それが森の価値をより高める方向でいかないとダメで、浪費してしまうだけでは非常にもったいない話になってしまう。この辺りの話は、一次産業の再興や、地域資源をどう使うかというとこと共通していると思います。
地域の特性を知った上で、この地域ではどのように活用するかと考えて進める仕組みを、そこに住んでいる人たちから起こさないとダメな時代になってくるんじゃないかなと思いますね。
そのような意味で、地域を知るためにどうするかの第一歩が、みんなが山に入ることだと思うのですよね。そのような森作りが必要なのかなと思いますね。
しかし、どこでも入れる状況ではないので、難しいところですが、このようなイベントを組むことで、少しでも山に来られるというようなことを考えていければなと思っています。宮川さんは、丹波市の環境政策の審議会の委員もされてらっしゃるということなんですけれども。

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○ちょっと気になっている、というタイミング

宮川:全国どこの市町村でもやっているんですけど、環境審議会という丹波市の環境政策全体に関わる多様な関係者が集まって環境行政を審議する場所があるんですね。
いま丹波市の環境審議会で話が出ているのはですね、環境と言った時に、人口150万人の神戸市と人口7万人弱の丹波市と、同じことやったらそれは違うだろうということです。
その審議会では、丹波の課題解決の方向を模索する中で、森林、里山、農村を新しい視点でもう一回活性化させるためには、都会の力や視点も借りながら、エコツアーのような、単なる観光ではなく環境がツアー資源になるような工夫を環境審議会としてやらなきゃいけないんじゃないかという珍しいことを言い出したんですよね。丹波の方々も、森や里山、農村がちょうど気になってきているんだという空気がありますね。
多様な産業の方々がみんな、やっぱりちょっと気になってるタイミングなんだなとは思います。


能口:多くの方々が森とか里山について、ちょっと気になっているという表現が適切なのだなと思いますね。情報が十分に行っているわけでもなく、気になっている状況ですよね。そこで、その地域がどうするか、どうしたいかですよね。それを表明すると、それを応援して参加したい方は乗っていきやすんでしょうね。
理解しやすいその地域情報がしっかりと出て、こういう活動に参加しませんかという話があると、協力体制が取れる方っていうのは結構いらっしゃると思います。この地域内ではそれがあまり届いていないというか、これからなのだろうなと思いますね。


宮川:丹波市民という位置付けでは、若い方と年配の方で意識の違いがあって。年配の方々が何で意識が違うかというと、自分達が木を植えた最後の世代なんで、その方々は植える前の姿と植えた後の変化を両方見ているんですね。
その子、孫世代になるとですね、変化を見たという意識はなくて、自分らが入らない山という意識なんでしょうね。
ちょうど境目の人たちがまだいらっしゃって、なんとかせなあかんとはなんとなく思ってらっしゃる。今のタイミングでいい働きかけが出来たら、おそらく境目の人たちも動きやすくなる。
若い人らも、なんや親父達がなんかやりだしたんはこれのことか、と説明が上手くいけば参加したいと思っている方は、潜在的には都会と同等におると思いますね。


能口:今後の人口減少で、担い手が本当にいなくなってしまう。特に兵庫県の北部などは、30年後くらいに人口が半分ぐらいになってしまうような集落が、結構多いのですよね。
やはり、その地域内だけの話ではなくて、そこに何か関わって貢献したいという方が、どんどん入っていけるような仕組みっていうのがないと、なかなか地域を維持出来ないと思っているのです。
宮川さんはいろいろな面で活動されているのですが、ご自身と森との関わりはどのような感じでしょうか?


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宮川:自分が森に食わしてもらえる仕組みを作るのが、ひとつの理想ですね。
私は森の中を歩くのが大好きで、歩いているといろんな発見があったり、天然物のシイタケ見つけた、みたいなことがあったりですね、楽しいんです。
それがちゃんと「食う(稼ぐ)」ことにつながってないと、腹の底から楽しむことが出来ないんじゃないかな、というのは思っているところです。もちろん、今も何かの仕事はして食っているわけですけれども、丹波から出ないでも食っていける、というふうになれば本当に森に食わしてもらう人になれる。< br> そういう人がもっと増えるためにも、自分がまず悠々と森に食わしてもらうようにならなければいけないなと思います。


能口:基本的な生活がその森の周辺で出来るのが、私は理想なのかなと思うのです。
そのために、森の恵みを享受できる方法をどれくらい持てるかということでもあるのですが。例えば燃料を森から採るといったように、暮しの中に森の恵みをどう活かすかということですね。
あと、今日みたいに、森の中で耳を澄まして森の音を聴くような、ああいうことが出来る場所もほしいですよね。
やっぱり、そこで何を感じ取れるというのは、森を活かすためにも非常に大事なことだなと思いますね。森を感じ取れるということでいうと、宮川さんは今までどのようなことをされてましたか?


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○自然の側に開けておく
宮川:私はテレビっ子だったのですが、子供時代は自然を紹介するような番組がたくさんあったんですね。そういうのを見ているとですね、当時は日本のものはあんまり扱われなくて、外国のものばかりで。
日本の生き物は見たことも名前も知らないのに、チーターやシマウマは名前が分かる。そういう世代でもあると思うんですね。
そして、子供時代の終わりぐらいに、ファミコンも出てきちゃった世代なんですよね。

一方で、やっぱり子供は遊んでいれば、五感的にいろんなものを遊び道具に引き込むんですね。
例えば、セイタカアワダチソウなんかを採ってきて、その先に糸を付けて釣りをするとかですね、そういうことをやっていると、あの葉っぱをしごいた時の匂いや手触りやっていうのが体に染み付いて、それが五感の土台になっていますよね。
その次はですね、他のことをあえて外の風があるところでやるんです。
例えば、パソコン仕事を窓を開けた空間でやっていると、ふとした瞬間にちゃんと鳥の声や葉っぱの色の変化なんかが体に染み込んでいる。

他にも、春から初夏の梅雨にかけて山にどんどん青葉が開く頃、例えば丹波の場合、桜は二回咲くとおじいさんが言っていたそうです。
実際には桜は2種類あって、4月の頭、ソメイヨシノよりも早く咲くヤマザクラと、ゴールデンウィーク頃に咲くカスミザクラ(ケヤマザクラ)の2種類あるんですけど、そんなのも、おじいさんやあばあさんは名前を知らないですけれども、ああ二回咲くなぁ、と言うわけです。
もう、農作業とかをやっていて見ているもので染み付いているので、そういうものが実は大事なのかなと思います。
それが多分、心地よい山や森を見分けるとか、森を活かすヒントを得るために大切なことだと。
例えば、私は、都会の人が山に入って喜ぶ季節を考えた時に、多分ゴールデンウィークが明けた頃に藤が満開になって、とか、桜を観はるんやったらこの辺でと、記憶をたどりながら思い出してすんです。
季節感を体に染み込ませていると、自然にピンとくる何かがあって。都会にいてもそういうのはありますので、自然の側に窓を開いておくという感覚かなと思います。

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能口:常に開いておけば、移り変わりなんかが分かるということは重要なんですよね。
この時期にはこういったものがあった、ここではこういうのがあった、と順番に埋まっていくと。

特に、農業などに関わっていると、必ず植える時期、収穫の時期なども含めて、そういった感覚は自然と入ってきますね。
森の場合、何かをしながら森の中にいるっていう人はなかなかいませんので、そういったことを増やしていくべきなのかなって思いますよね。
いま、この地域のことばかり話していましたが、全国的に今の森林の状況で里山というのがすごくクローズアップされてて、COP10でも里山イニシアチブといった形で、世界に広げようっていう話が出ていると思います。
林産業と里山の関係で、今後、木材コーディネーターが両面をきちっと見て、持続的に森林資源の活用ができるモデルをきちっと作り上げるべきだと考えているんです。
そのあたり、生物多様性の面から考えて、例えば林業についてはどうあるべきかというような考えはどうでしょうか?


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○自然に委託する
宮川:私は製材のプロではないので、木の質という意味ではよくわかっていない部分もおそらくあるんですが、昔の人たちの考え方の中で優れているところはですね、人間が全部管理できるとは思ってなかったところだと思うんですね。
同じヒノキを植えたようでも、立地によって土質によって、日当たり湿度によって、成長の度合いが全然違うと思うんです。
ですので、森を作るとか、材木山を作るとしてもですね、べったり一様に出来ると思わないことですね。
よく能口さんからも伺いますけれど、目的とする材に適した立地とか、あるいは目的とする恵みに対して適した姿というのは、おそらくすごく混在しながら濃淡のグラデーションになって、ゾーニングはいろいろ出来ると思います。
そのときに、見かたとしては、100%収穫できるという考えを捨てることだと思いますね。
例えば、同じ森林に対して、水を守るための水源涵養林という考え方を上からかぶせたり、あるいは、生態系保全の視点も盛り込みつつ、それから、農地のために必要な資材を得られる森という視点だったりという視点を持って、どれかについて100点の森を目指すんじゃなくて、6割いい材が採れる、あとの4割は自然の取り分だと思う方が、トータルでみた場合には、6割を全項目に採れる可能性があると思うんですよね。
私達が自然に任せることが出来る、自然に委託するという考えでもいいんですけども、例えば、いい水をつくってもらうのは自然に任せた方が自分らの手間がかからないし、おいしい水を作ってくれる。その辺りをもう一回考え直した方がいいかなと思います。

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能口:全部一律でプランテーションのように、同じような収穫量を目指すという考え方ではなくて、いろんな価値をそのエリアに持たせる。
複合的な、副業の重なり合いでもいいのですが、そのような形で全体の収穫量を上げる、という考え方に移行しないとその森林の多様性を得られないだろうと思います。
それは、モデルとして何かひとつ作りたいなと思うんです。
ひとつの業界だけでは、なかなか分からないことがあったりしますから、広い視点を持って語れる、いろいろな業界の方が集まるようなことが地域づくりになっていくのかなと思っています。
丹波地域では、そういったことが出来るんじゃないかなと思いますので、今後、サウンドウッズと「生物多様性かんさい」の活動、もしくは森の都研究所としても連携が取れればと思います。
逆に宮川さんのほうからサウンドウッズ側に要望がありましたらお願いします。


宮川:木材の多様な価値っていうときに、価値判断の選択肢が狭くなっていると思うんですね。
例えば、スギ、ヒノキの林の活用方法について、今はたくさんあるからこれを何とか製品に出来ないかという言い方が結構あるんですけれども、それは、常識的な経営の視点では、企業の経営の視点ではないですよね。
持続可能なモデルを作るという視点ではなくて、今のスギ、ヒノキのどうしようもないものを使い切るにはどうしたらいいという発想でしかないんです。
そうではない価値を、どんどん発信していく主体が少ないので、サウンドウッズさんの役割はそういうところなのかなって思っています。


能口:そういった役割は、いろんな業界の現状をちゃんと分かった上でないと、なかなか動けないことですね。
サウンドウッズというNPOがそのような視野を持ちながら進んでいけるのであれば、ひとつの新しい形を打ち出せるのではないかなと思います。
林業側から話をすると、木材生産が唯一の視点になっています。
先ほど言われたように、現在、日本の山には大量の資源があるので、量を使っていく流れにはなるのですが、どんどん大規模化にいくと、より広いところ、つまり世界を見ていくようなことになるんです。しかし、その地域にはお金が返ってこなかったり。
継続的、持続的にやろうと思うと、地域が広い視点を持って持続的に整備しながら、その地域を活かす動きを作らないとダメなんだろうなと思います。各地域に出来ることが、全体の地域づくりになるのです。それが全体の、生物多様性を含めての視点だと思うんです。


宮川:これまで森林に関しては、地域が地域会議になりすぎて損をした、というかですね、例えば、植林は、大きい意味では林野庁から、木を植えれば補助金が付く時代になった時に、あまりに狭い視点で、いまお金が稼げる、集落にお金が入るからと言って木を植えていったんですけど、そのときに多様な視点でバランスをとることをやらなかったんですね。
その地域より外を含めて考えることをしてなかったので、みんなが木を植えたら木の価格が安くなるという当たり前のところに頭が働いてなかったように見えます。
もちろん、補助金の構造もあったんですけれども。
ローカルに入り込むときに、広い視点でバランスをとりながらということが、やっぱり大事ですよね。

そういう意味では、今ある森の姿を前提にするといけなくて、もっと長い視点でのゾーニングをかぶせて、ここから上はどうせ管理がやりにくいから原生林的にして稼ごう、とか、地域のためにしようというのを、どこかでかけなきゃいけなくて。
その視点を持ち込むのも、ひょっとしたら木材コーディネーターさん達が一役買う場面なのかなと思いますね。


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能口:そういう側面を担う人達が求められているけれども存在してないですよね。
しかし、そういった視点は一番大事なことであると思うんですよね。
これから、森という考え方の中の、生産においての価値の付け方や、森との共生のためのそういった価値の見い出し方が必要だと思いますので、ぜひそのような面でもまたいろいろと連携をお願いします。
今日はありがとうございました。
宮川:ありがとうございました。


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