森の達人04 林業家・山口祐助さん

2011年6月15日
「森の達人」4回目は、2011年1月22日に兵庫県丹波市立休養施設やすら樹にて
林業家の山口祐助さんをお招きして木材コーディネーター能口秀一
対談した模様を収録しました。

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山口祐助(やまぐちゆうすけ)
林業家
作業道を高密度に張り巡らせて、抜き伐りで効率的な木材生産や、針葉樹と広葉樹を混生させた整備を進めている。優れた森林経営が評価され、平成20年の全国林業経営推奨行事(大日本山林会、全国林業改良普及協会主催)において林野庁長官賞を受賞。篠山市在住

「兵庫の林業」に紹介されました。


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能口:今日は林業家の山口祐助さんをご紹介します。
一緒に山に行かせていただいたり、ツアーで森林を見学させていただいたり、色々と山口さんにはお世話になっていますが、今日は山口さんの林業家としての経験というものをお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。

山口:よろしくお願いします。

能口:つい先日も、どのように木材利用を活性化するかという主旨のシンポジウムで、日本の林業の現状についてお話する機会がありました。森林や林業を取り 巻く状況が急激に変化してきているので、業界側も情報発信を正確に行わないといけないのでは。というお話をシンポジウムではしました。


例えば、よく山口さんのところへ間伐材をいただけませんか、という依頼が来ることがあるかと思います。その際に、「間伐材だから低質だ」ということで、タ ダ同然のような話をされることがよくあると思いますが、実は原木の市場などにも出てくる材は、間伐材であるか主伐であるかの品質的な差は、伐られて市場に 出てきた時点でほとんどなくなっている。
しかし、今の木材の価格は、間伐材の価格で止まっているような状況で、もう一度木を植えるためのお金は価格に乗っていない。つまり、再造林できないような価格がずっと続いているわけです。そのような今の林業の現状というものについてはどう思われますか。

○間伐や択伐で出すしかない
山口:林業をやってる人が、本当に少なくなってしまってるんですよね。森林組合などに勤められて林業の作業なんかをされてる方はあるんですけども、山を 持って生活をしていくというような人は、本当にもう少なくなってしまいましたね。さっきの間伐材の話ですけども、少ない林業家の方のここ10年20年くら いの動きとしては、とてもじゃないけれども主伐をして再造林をし、新たに森を作り上げるのは無理なので、間伐や択伐というような形で木材を出していく以外 に林業を続けていく方法はないなぁ、というようになってきているのが現状です。ウチなんかでも、ここ20年ほど主伐、皆伐というのはしなくなった、という より出来なくなりましたね。


能口:これまで主伐で回転していた木材利用の流れが今は間伐で進めていくという流れになってきたということですね。これは価格との関係が大きいと思います。
山に手を入れられないことで森の荒廃を招くという話がありますが、実際に山の現場におられて、森が荒れていると感じるようなところはありますか。

山口:やっぱり手入れが行き届かない林は、ほとんどが荒れてきていますね。いい時期に的確な施業さえしてやれば、見違えるようになってくんですけども。山を管理する側はそれが出来ないし関心がない、というのが現状だと思いますね。

能口:山口さんが仕事として林業に携わりはじめた当時の林業は、今とは目標が違っていたんじゃないかなと思いますが、そのあたりはいかがですか。

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○枝払いでチェンソーなどというものは
 山口:私は学校を卒業して、まず三重県の諸戸林産というところに就職というか勉強をさせてもらいに行ったんです。その頃は、今では考えられませんけれども、全国の長者番付の十傑に林業家が2軒くらいありました。
そういう時代でしたから、今とは全然違うよなあと思いますね。でも、林業家自体の目標は森を良くして林業を途切れなく続けていくことで、今と変わらない目標なんですけども、それができるかできないかという条件が今とは全然違っていましたね。

能口:当然、木材の価格が違いますよね。木材の扱いについて、以前ある林業家のお話を伺うことがありましたが、その方は非常に高価なものを扱ってるという 意識で木材を扱っておられました。今は山に高性能林業機械という形でいろいろな重機が入っていますけれども、その方の所有する重機の1つにプロセッサとい う機械があり、掴んで枝払いをして玉切りも出来るものがあります。
一台でいくつもの役割を一瞬でこなしてくれるわけですが、プロセッサは機械で掴んで傷をつけながら枝払いしていきますので、丸太を一目見ると、プロセッサで出した木だなというのが分かるわけです。
原木の皮にローラーの傷が付いていること自体が木材の価値を落としていると考える時期もあったわけです。今はプロセッサで搬出された木をみんな見慣れてし まっていて、原木の皮に傷がついているから木材の価値が下がることもありませんし、それについては話をすることもなくなりましたね。


山口:三重県にいた時には、枝払いでチェンソーなどというものは使ってはならないよ、と言われてました。ヨキって言いましたけど、斧ですね、それでやると 表面がツルっとしますよね。それで枝をひとつひとつ落とせと言われました。それがだんだん木材価格が落ちてきて、数を量をと質よりも量を求める流れに変 わってきた頃からチェンソーで枝を払うようになってきました。今ではプロセッサでしごくので、表面の美しさは全然関係ないわけです。だから、林業の衰退と 同時に見た目のことも変わりましたね。


能口:木材の価格が下がったから、それに見合う生産のコストでということで山側も効率化をしていかないと利益がでないということになり、どんどん生産コストを下げる方向へシフトしていきました。
さらに問題なのは、山の手入れをして良質な材が出来たものと、手入れ不足で質が悪くなった状態の材が一緒に扱われることです。
従来は木材市場で買い付けを担当する者が良質な木を見た上で、競りで木材の価格が決まっていたわけですが、そういう市場の機能はほとんどなくなってきています。
これはマーケットの方で、そういった良質な木材が求められていないということですね。では、現状にあったやり方での森林の管理というとどんどん荒っぽい方 へ向かいつつあるのは確かだと思います。このままでは木材の低質化がますます進み、その結果価格が非常に下がって底値で安定するような状況になってしまい ます。


○やってきたことが報われない
山口:今まで緻密な手入れをして価値の高い材を出してやっていこうという人たちが本当に困ってしまってるんだと思うんですよ。
それは、今までやってきたことが報われないからです。これは大きな流れなので致し方ないと言われればそうかもわかりませんけど、やっぱり寂しいことやなと思いますね。

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能口:林業で生計を立てること考えた時に、いま出てきている1つの解は、大規模で安く大量に木材を出して回していく林業の大規模化ですね。そういう方法が、国が進めている国産材の需給率を上げるということのひとつの解だとは思います。
しかしそれは、自分の山の手入れをして価値を高めてきた方の林業の方向性とは一線を画すところがあります。そういう方が今後林業で生計を立てるには、良質 な材を求める方と繋がるような仕組みを作るというようもの以外にこれまでつくり上げてきた材の価値を活かすことはできないだろうなと思います。

山口:最終的には、山と木を使われる方との結びつきというところまで行くんでしょうけども、そのような結びつきの中でしか材の価値を認めてもらうことは難しいのかなと思いますね。

能口:例えば農業の場合、新規就農者という形で新たに入る方はいらっしゃるんですけども、林業の場合、新規で始めようとすると、森林組合などへの就職とい うものではなくて、林業を本当に業として新規に始めるとなったらどうなるかと。これは、山の価値も関係するわけですけども、どういう価値の山をですね、ど ういう規模で持って、どのような販売をしていったら林業として成り立つのか。山を持ってなければ、既にどなたか他の方が手入れをして育てた山があって、そ れを購入してスタートして林業で食べていこうと思うと、そういうのが実際可能なのかどうか。

山口:昔、私がお世話になった諸戸林産は、今は大手自動車メーカーが買い取って変わってしまいました。
大手自動車メーカーは林業経営をそこでやろうという目的でその林業会社を買い取ったわけではないんですよね。
今言われたような、林業家を目指して山林を得て、林業に参入することは、今は山林が安くなっているので可能なんでしょうけども、聞いたことがないですね。
その理由は、能口さんはどう考えますか?

能口:木材だけで、その価値をちゃんと活かせるような仕組みが出来ているのかということですね。
マーケットときっちり結びつて、直接販売が出来る仕組みを持っているような状況でなければ、採算が合わないという話になると思うんですね。
林業ではなくて森林として見ると、二酸化炭素の吸収の森というように排出権取引の中で有効に作用する可能性があり、森林を所有しておくべきと考える素地も出てくると思います。
異業種で、そういった森林を所有する方は増えてくると思います。二酸化炭素を吸収するという違う側面の価値を同じ山に見出しているわけですね。
例えば、自分の山を、林業ではダメなんだけれども、多方面で森林という山の価値を捉えて、事業化していくことが出来るんじゃないかなと思いますね。
林業だけの価値を求めるとなかなか成功例は見えないのではないのでしょうか。

○質と量の二本立て
 山口:県内の方ですけれども、ご主人と息子さんと息子さんのお嫁さんと3人で林業をされている。
自伐林家で、自前で道を付けて、プロセッサも使うそうですけど、十分に成り立っているっていう話を聞きました。
そういう意味では、まだ林業をやっていける道はあるかなあ、と思いますけどね。
また、質よりも量に重きをおく昨今の林業の流れは篤林家にとってはあまり受け入れられるものではないと言いましたけれども、それなら量に徹しようということでやってる人もあるようですけどね。

能口:私の知っている方は、こちら側の山は十分手入れをしているから大事に売っていって、あちら側は並材、いわゆる並材として量で勝負するところというように分けて考えている。
これを、同じ設備、重機でやっていこうとすると、どちらかは効率の悪いものになってしまうので、両面で対応できるような機材を持ってかかるそうです。
人材も、木を見て活かせる人と、品質とか関係なく量をこなせる人の二本立てでやっていく。こういう方法もこれからのやり方なのかなと思いますね。
あと、「土佐の森」でやっているような林地残材を集める仕組みの中での農業との副業的な扱いですね。林地残材を集めてくることがきっかけになって農業などをされていたる方がまた山に入っているようになったそうです。
このような仕組みで、例えば集落の近くの山などは整備されることが今後出てくるかなと思います。

山口:林業が副業を持つんじゃなくて、林業自体が副業という位置づけをするということですね。そういうやり方であれば、生活も十分やっていけるかなと思いますね。

能口:この方法は林地残材を集めたら買い取ってくれるという仕組みがあれば成り立つ仕組みです。
逆に、農業の問題のひとつである獣害への対策として、例えば奥に広葉樹の森を作って、自然と手前に有害鳥獣が出てこないような森林整備もできるのではないかと思います。
そいう意味で今後の森林、森の将来像のイメージは、山口さんは何かお持ちですか。


○森に近づける環境づくり
山口:大規模な道ではなくて作業道というようなもので十分なんで、道を森に廻していって、木材生産はもちろんですけれども、森が周りの人たちの憩いの場や教育の場になることも十分あると思うんですよ。
ツリークライミングなどを森でするなど、子供達が森で遊ぶことが出来たら、やっぱりいいんだろうなと思うんです。
いろんな役割を持つ森へ手軽に行けるということは、ひとつ重要なポイントやと思うんで、その整備が必要と思いますね。

能口:気軽に入れる森というのは、公園とかしかないわけですよね。
観光地のようになっていたりとか、作られた形が多いと思いますけれども、そうではない気軽に入れる森がもっと身近にあればいいのではないかと思いますね。
山口さんの山に見学ツアーなどで行かせていただくと、針葉樹だけではなくてトチとかカツラなども植えておられるようですが、木を植えて森を作っていく、森をデザインするっていうのはどのように考えていますか?

山口:森を大規模に変えるのはなかなか難しいんで、少しずつはじめるということが大事だろうなと思います。
例えば、カツラなんかは、森へ来たなあ、っていう感覚を持たせてくれる匂いがします。
私もあの香りが好きで、カツラを植えたりするとその香りにみんなが驚きますね。
ああ、こんな香りがするんだな、っていう。
じゃあカツラの純林がいいのかって言うと、そうではない。
だから、森のデザインっていうのは難しいだろうなあ、と思いますが、いろんな種類の木が生えているというのは面白いんかなと思いますね。
ただ、いま獣害で本当に森の植生が単一化してしまっているんです。

能口:鹿が食べない種類の下草だけが山に残っているも状況なんですね。
それを元々あった植生に戻すために、総合的にどういうことをしていくのかを考えないと、せっかく木を植えても鹿の餌になってしまいます。
スギとヒノキの森というエリアで、ある程度の木の樹齢が70年超えて出来上がった森でしたら、今後100年とか150年200年、大きく育つための森づくりや、広葉樹との混交林にしていくための森づくりなどいろんな手法があると思います。
スギ、ヒノキ林の、林産業のための森づくりとは違う側面を、今後どういうふうにして取り入れていくべきか、どこら始めていくべきか、ということを考えています。

山口:まず人が森に近づける環境を作っていくとが大切です。
そのような環境があれば、人間はいろんなことをやり始めるんかなとは思うんですけどね。植樹っていうのは本来おもしろいもんなんですよね。
昔、私が三重県でやっていたスギ、ヒノキの植林は、つらいと言いますか、あんまり好きじゃない作業でしたけども。一日200~300本くらい朝から夕方ま で植えるわけですから。でも、その将来を想像して森をデザインしてみようか、という気持ちにもしなれれば、植樹っていうのは非常に楽しいもんです。

能口:小さい苗木で広葉樹をただ植えて育つエリアというのは少なくて、鹿に食べられないように金網をしたりで、結構お金が掛かるものになっているんですね。
森づくりに、森林所有者だけではなくて、他の方の協力が得られるような仕組みが必要なのかなと思いますね。
スギ、ヒノキなどの人工林の部分においては、林業の中で上手く循環していくようなことを考えるべきなのかなとも思います。

山口:この前、薪の需要があるという話を聞きました。いま薪ストーブが、流行っているので薪がいるよということです。
昔は、お風呂を焚くにもご飯を炊くにも薪がいって、みんな普通に山へ行ってたんですけれども、今は家を建てて薪ストーブを入れたけど薪がない。
なるほど、そういうところに薪の需要とか必要性はあるんだなと思わされましたね。

能口:宅配で買える薪がありますが、薪ストーブも高いんですけど、薪も高いんですね。
身近に薪が手に入るような仕組みは今消えてしまっていて、逆にそういうニーズがある程度出来てくれば、それに対しての仕組みがまた出来てくるかなとは思いますけど。
そういう意味で、森林を特に所有していなくても薪くらい取りに入れる山があれば、非常にいいのかな。
その地域の人が昔の「入会」のような形で入れるような、開かれた森というものを計画していくことで、地域の森林を守るようなことに繋げられればと思います。
例えば、丹波市などでは市内のどこに行っても森の木の形が見られる程度の距離で山があるわけですが、全国的にそのような場所ばかりというわけじゃないですよね。
自分がどこかの開いた森に関係があり、そこに参加している意識が繋がれば、森に対してどうしようかというアクションを考えることがあると思います。
サウンドウッズでもイベントなどの形でいろんな方が開いた森に参加できるような仕組みを作っていきたいと思います。
また一方で、木材の価値を最大限に活かした形で消費者に届けるような、林業家と木材コーディネーターのコラボレーションをサウンドウッズとして進めていきたいと思っています。
消費者にどんどんPRしないと森に参加したいというニーズも見えてこないというのが今の状態だと思いますね。
実際に、森林ツアーに参加される消費者の方には、これから家作りを始めようという方、また、それを考えている方とか、いろんな方がいらっしゃると思うんですけど、そういった方に対して何か感じることはありますか?

山口:山の人間というのは珍しいなと消費者の方に思われているのを感じますね。
だから、山に携わる仕事をしていることはやっぱり喜ぶべきことやなと思いますね。
また、コーディネーターさんの方から特殊な木がないかという話もあったりして、こういう物がないかとか、私の山の木が欲しいって言っていただけるのはありがたいなっていうことは思いますね。

能口:ニーズを的確に直接森林側に伝えることで、そのままではあまり価値がなかったものに別の意味で価値が出てくる。情報がちゃんとつながると、森に還元されるものも多くなる。今まで見えなかった価値が出てくるということですよね。

山口:だから、ここの木材コーディネーターの養成講座ですけれども、コーディネーターの方が増えていかれることは、本当に心強いなという気がしますね。

能口:木の価値を伝えたり、森にあるものを活かす手法を身につけた人材が増えることで、そういう方が活躍できる場もどんどん増えてくるんではないかと思い ます。そういったことをサウンドウッズとしても今後担っていくべきだろうなと思います。最後に、山口さんに将来の目標をお伺いしたいのですが。


○採算が合うようにして伝えなくてもいい
山口:私には息子がいるんですけれども、息子は林業の仕事を継がないよと言っています。
まあ、私が受け継いできたこと、やってきたことが途切れてしまうということは寂しいことではあるんですけれども、その分、変な話ですけれども、採算が合うようにして伝えていかなくてもいいんだな、とも思います。
ということは、森づくりを創造するとかデザインするとか、ということに私の目標を変えていってもいいんだなぁという気がしてるんですよね。
だから、ある意味寂しいけれども、ある意味希望もまた出てきたかな、と思ったりもしてるんです。あまりいいことじゃないかわかりませんけどもね。

能口:将来の誰かが、今やったことに対して振り返って考える時もあると思うんですが。

山口:継いでもらうっていうことは、息子である個人に渡していかなければいかんっていうことですけども、それが別に必要なければ、いろんな人の森ということに目標を変えていってもいいわけですから、そういう面では楽しくいけるのかなという気はしてますね。
それと、コーディネーターの方と関係を持っていくと、いろんな人との繋がりがあり、こんなものまで必要とされているのかな、っていう喜びが出てくると思うんで、それもひとつの目標になってると思います。

能口:それは森の所有から森の運用へちょっと視点を変えるようなことでしょうか。

山口:呪縛から解き放たれたような、そういうところもあるのかな

能口:相続によっていきなり森林所有者になる方もいらっしゃいますが、森林をどうしていくかっていう答えを明確に出せるような方は少ないですね。情報がなかったりしますし。
森林、特に人工林などは適切に管理していく、手を入れていくことが必要になりますので、そのあたりを団地化、大規模生産だけではなくて、高付加価値化と利用の多様性を合わせた形で、今後進めていくべきかなと思います。
それは、所有者の方の考え方で森林管理の方向性が決まっていくと思いますので、そういったことをNPO法人サウンドウッズとして、森林所有者の方とコラボレーションできるような活動としていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。
今日はありがとうございました

山口:ありがとうございました