座学9-12木材コーディネート基礎講座(平成29年度)

2018年1月25日
木材コーディネート基礎講座の第9回目が開催されました。
寒波が襲い交通機関が乱れる中、みなさま全員無事揃って受講していただきました。
今回はインターンシップ生の秋田、若林の順でレポートしていきます。

第9回の講座は以下のとおりです。

【講座概要】
日時  :平成30年1月13日(土) 10:00 ~ 17:30
講師  :安田哲也(サウンドウッズ代表理事)
     能口秀一(木材コーディネーター)
     宮村 太(准木材コーディネーター)
事務局 :藤田良子
インターンシップ生:秋田麻菜香、若林知伸
場所  :近畿中国森林管理局
内容  :座学9  木材コーディネート事例A 一般建築例
     座学10 木材コーディネート事例B 公共建築例
     座学11 関係業者ネットワークとリスクヘッジ
     座学12 森林と木材流通の各種制度
     木材コーディネート事例発表

【講座内容】

<講座レポート1 作成者:秋田麻菜香>

座学9 木材コーディネート事例A 一般建築例

第9回は、サウンドウッズの代表を務め、建築士の立場から木材コーディネートに携わる安田哲也氏による講座から始まりました。

木材コーディネーターという職業は、まだまだ珍しい職業であります。
受講生の方々は、「木材コーディネーター」について学んでいるけれど、
「実際のところ、どうやって事業を進めているの?」という疑問を抱いていたはずです。

そこで受講生には、安田氏がこれまでに手がけてきた事業例について知ってもらい、
具体的な木材コーディネーター業務に関する知識を深めていただきました。

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はじめに、「木材コーディネーター」の役割や業務内容のポイントについて理解していただきました。

木材コーディネーターの最終到達点は、次世代の山を育成できるよう、
「山主さんの手元に戻るお金をできるだけ多くすること」です。

その為には木材流通の各段階で、大変多くの課題を解決していかなければなりません。
現在の山に利益がほとんど残らない流通構造にメスを入れ、山と街を繋ぐ役割を担います。

「結局、木材生産を増やすには、使ってもらう出口を作らなければならない。
でも、ただ増やすだけではいけない。付加価値をつけて良質なものを、適正な価格で取引してもらうことが必要」

「木材調達だけにとどまらず、大事なのは公平に、そしてやる気を持って取り組んでもらえるような仕組みづくりをすること。」と安田氏。

依頼される業態によって、対応はずいぶんと変わってきます。
民間事例として、住宅の建築について紹介がありました。
これまでになかった評価法の開発など、たくさんの工夫が施された仕組みについて説明がありました。


座学10 木材コーディネート事例B 公共建築例

続いての事例紹介では、公共事業です。
公共事業では民間に比べ、建設規模と必要な木材量が格段に大きくなります。

これまでサウンドウッズでは、多くの公共建設物の木造化に携わってきました。
その経験をもとに、公共事業特有の課題の乗り越え方について、小学校の木造校舎建設を事例に、
具体的な業務の流れを理解していただきました。

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「不特定多数の人が利用する公共建築物は、建てる前や建てている最中だけでなく、建てた後にも気を配るべきである」と安田氏。

どうしたら地域住民に木に対する意識を持ってもらえるのか、どうしたら木造校舎に宿る想いを後世に引き継ぐことができるのか、緻密に考え、「小学校」という特徴を存分に活かした建設プロジェクトに、受講生は驚いていたようです。

2講座を通じて、民間事業と公共事業の違いについて説明がありましたが、
最後に、安田氏は「民間と公共、どちらも大切であるのは、その地域にあった無理のない範囲でプロジェクトを進めること。
今後の地域の流通を乱してしまわないよう、加減が必要」と付け加えました。


座学11 関係業者ネットワークとリスクヘッジ

午後からは、木材コーディネーター能口秀一が講師を務める座学11「関係業者ネットワークとリスクヘッジ」が始まりました。

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まずは、木材コーディネーターとしてのネットワークの構築の方法について。
木材コーディネーターは地域材の流通の促進を行うけれど、具体的に何を目標とし、どうサポートして関係者とネットワークを形成していくべきかについて、説明がありました。

能口氏によると関係者への「問い方」が大事であると言います。
その点についても詳しく、受講者の方々には理解していただきました。

「基本的に効率的に流通が回ることを前提に取り組み、関わる事業者がコーディネーターによる案件を経験することで、次のステップにつながるようにすることを心がけている」と能口氏。
これが木材コーディネーターの基本だといえそうです。

次に、リスクヘッジについて説明がありました。
木材コーディネーターは、連携事業者の体制を熟知した上で、余裕を持ったスケジュールを立てていかなくてはなりません。

能口氏からは、日頃からリスク回避のために気をつけていることについて、説明がありました。

「良い原木からは良い製品ができるのは当然だが、良い原木が入らなかった時にギリギリで間に合わすことをなくすためのリスクの考慮が必要である」と言います。


座学12 森林と木材流通の各種制度

座学12「森林と木材流通の各種制度」では、冒頭から「森林認証には何がありますか?」という質問を投げかけられました。
首を横に傾ける受講生達。

木材には、森林認証や生産者認証など、認証制度が多く存在します。
「認証」と言われると良いイメージが伝わりますが、何を認証しているのか理解していないと意図しない木材を使うことになります。
それらの違いや、現在の木材流通において注目されつつある認証について説明がありました。

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現在は以前に比べ、適切な環境で育った木材であるのかといった、環境面での配慮が求められるようになってきたと言います。

講座の最後には、木材コーディネーターの立場で地域産材を活用させる際に気をつける点として、

「山離れが生まれる現状の中、関係者同士が潤うだけでいいのか、
どういう意義で活性化プロジェクトをやっているのかは、個人差が出る傾向にあるので、
共通の理念を最初に作っておく必要がある」

「まずは山主から意識を変えてもらうことが必要で、製材所→木材販売→工務店と段階的に対象を広げていく形をとるべきである。
そうやって山林所有者にやる気を出してもらう仕組みづくりを考えていかなければならない」という言葉を残しました。


木材コーディネート事例発表

最後の講座は、宮村太設計工房の宮村太氏をゲストに迎えての事例紹介でした。
宮村氏は基礎講座の修了生でもあり、現在は建築士という立場から木材コーディネート業務に関わっていらっしゃいます。

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まず、滋賀県での地域材を使った家づくりについて説明がありました。
はじまりは、知り合いの林業家の木で家をつくりたいというお施主さんとの出会いだったといいます。

その出会いから、できあがった家には、「大きな木は大きく使う」「使える部分はすべて使い切る」など、山から切り出された後も木が木らしく使われる工夫がたくさん施されていました。
地域材を使うという顔の見える家づくりにおいて、重要なのはこういったことなのかもしれません。
生産者と施主の双方にとって思い入れのある家が地域を活発にしていくのだろうと感じさせてくれました。

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いまでは一般人向けに森と木に関するイベントも行うなど、木材コーディネーターとして活躍されていらっしゃいます。
木がふんだんに使われている住宅のスライドを見ると、数年前までは木材なんて全く知らなかったというお話が嘘のようです。

続いて、基礎講座の受講生のときに発表したプレゼンテーションを振り返り、「現在はどれだけ進歩しているのか」発表していいただきました。
また、講師の能口氏からの質問にも答えていただきました。

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なかなか簡単にはいかないようですが、このように懸命に努力する宮村氏の姿は受講生の方々にも響くものがあったのではないでしょうか。


<講座レポート2 作成者:若林知伸>

座学9 木材コーディネート事例A 一般建築例

第9回目は、NPO法人サウンドウッズの安田氏より、これまでのサウンドウッズの活動から事例の紹介がはじまりました。

これまでのサウンドウッズの活動から、木材コーディネーターの役割と誰がお客様で、どうやって収益を得ていくのかを再確認しました。

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「どんな立場で誰にどんな利益を生み出していくかは皆さん次第であるが、サウンドウッズとしては、山の森作りに還元していくことを目的として皆さんには担ってほしい。」

「森林所有者に意識付けをしていくことと、一方でユーザーに確実に質の良い木材を届けていくということの両方を実現していくことに注力している。」

その上で、民間プロジェクトが紹介されました。
「一般の建築士は木造のことを学んでおらず経験も浅い。」
「地元にある木を用いて地元で家を建築できないこと、していないことが単純に疑問だった。」
という疑問から、サウンドウッズはスタートしたそうです。

「建築で地域材を使うことで森の間伐を行うことを建主に説明することから始めた。」

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このような取り組みの中で、印象的であったのが原木の価格設定でした。
「当初の原木価格から値上げを行うタイミングで、森林所有者が主体的につける価格を上乗せできるようにした。
搬出する木材に、値段を所有者がつけるということが重要だと考えた。」

また、プロジェクトの肝として、
「実際に木拾いをするときに、見積もりを出すことが重要である。
これにより、山から直接出す木材と量産流通されている木材を用いる割合の損益分岐点がわかる。」
と解説がありました。

最後に、これらの経験から立ち上げられた立木検索システムの紹介がありました。
これは、建築に必要な材の情報を入力すると、どの場所の木を伐採すればよいかがわかるシステムで、木造建築の設計者にとって大いに役立つツールでした。

座学10 木材コーディネート事例B 公共建築例

引き続き公共プロジェクトの紹介がありました。

政府より公共建築物の木造・木質化が推進されている中で、どのようなプロジェクトにどんな立場でサウンドウッズが関わってきたか説明がありました。

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「地域の材料を使いたいというニーズは自治体に一番ある。
しかし、そこには3つ課題があり、公共建築物の木造化を難しくさせている。」

その課題解決のための政府の支援プログラムの委託を受けた経験が解説されました。

「発注する前の支度ができていないことが、コストが嵩む要因となっていた。」
「自治体において、各役場の承認を取り付けることが最初の課題であった。そこでは合意形成のような支援も必要となる。」
「木造施設をきっちり設計できる方に設計してもらうことが重要。」
「一定の規模の建築物に対して、安定的に材が供給されるように、地元の業者に発注するためのアドバイスやコーディネートも行った。」

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また地域材を地域の業者で使えるようにするためのノウハウも紹介されました。

「地域の材を上手く発注できれば、計画に余裕が生まれ、確実に供給してもらうことができる。
その余裕が生まれることで、森林整備の計画も同時に行うことができ、地域の森林の保全や森林所有者の活性化にもつなげられる。」

ただし、そのノウハウについては注意しておかなければならない点もありました。
「何か問題があったときに責任の所在があいまいになってしまわないよう、事前にしっかりと決めておく必要がある。」
このようなアドバイスがあり、午前の部は終了となりました。


座学11 関係業者ネットワークとリスクヘッジ

午後からは、講師の能口氏より、関係業者ネットワークの構築とそのリスクについて、講座がすすめられました。

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ネットワーク構築については、
「(地域の業者が)どういう体制のところで、何が得意なのか、どういう状況だったら(発注を)こなせるのかということを事前に調べて、ネットワークを構築する必要がある。」

「プロジェクトを行った際に、その仕組みを継続させたいかどうかを(地域の行政など)依頼主に問うと必ず継続させたいと答える。
しかし実際は、木材コーディネーターが来なければ、関係がバラバラとなってしまい、継続的にプロジェクトを行えないことがままある。
地域に木材コーディネーターを育成できれば良いが、それも難しい場合が多く、課題となる。」

「皆さんが地域に初めて行ったとき、どこに森林の情報が集まっているか、どういう人がその情報を持っているキーマンなのかを把握する必要がある。
森林簿の情報と実際の情報が異なることもあるので注意しなければならない。」

といった注意点が挙げられ、各業者(素材業者や製材業者など)において、コーディネーターが把握するべき項目をひとつずつ洗い出していきました。

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「製材業者も地域によっては、分業体制になっているところがある。
そういう場所では、製材の種類によって対応してくれない業者もあるので注意しなければならない。」

そして、リスクヘッジとして、計画段階で検討しなければならない項目も確認しました。

「(特殊な製品も含めて)原木が効率よく調達できるかどうかを考慮し、地域材の利用率を設定していく。
単純に輸送費だけで決めるのではなく、できるだけ山側に利益が回るように基準を持つべきである。」

「建築部材はプロセスの進行中に変更が入ることがある。
原木の調達や製材においては、未確定で進めていって調整ができるものと、確定できるものとを分けてスケジュールを組むことが肝要。」

「予備材の設定も重要となる。
何%くらいロスが出るか予測し、代わりのものを用意するというコストとの兼ね合いを図らなければならない。」

どういった原木、製材品を優先するか確認し、座学11は終了しました。

座学12 森林と木材流通の各種制度

初めにどのような森林認証制度があるか能口氏より受講生に質問がありました。
FSCは受講生の間でもよく知られているのか皆様すぐに答えていました。

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「認証制度のマークをつけた製品を販売することで、違法伐採による材を使用していないというアピールになる。
現在では、製材所などで、そういった認証制度を知らずに、安い材ばかりを購入しているということ自体が社会的に問われることとなってきている。」
森林認証を確認したのち、生産者の製造にかかわる認証や、行政の補助制度など解説がありました。

「FSCなどの森林認証は品質の保証制度ではない。
品質の保証としてはJASなどがあるが、そのような制度と混同しないように注意する。」

「県産証明材取得には、木材生産地、伐採業者等、多くの情報が必要となってきている。
これは、林産業界を重視する流れから、森林の保全や合法木材など環境を重視する流れに傾向が変わってきているためである。」

「関係業者だけが潤うだけとはならないよう、地域材を使うことで、その地域の何が変わるのかということをコーディネーターとして意識してほしい。
最初に理念を作成しておかなければ、みんながばらばらになってしまう。」

木材コーディネート事例発表

最後に、基礎講座の終了生で准木材コーディネーターの宮村太氏から、現在の木材コーディネート活動とこれまでの事例について発表がありました。
宮村氏は現在滋賀県の湖西を拠点として、活動されています。

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初めに滋賀県の木材流通事情について、林業家、製材業者、そして建築業者に焦点をあてて説明がありました。
宮村氏はそのネットワークを活かし、一般社団法人安曇川流域・森と家づくりの会も運営されています。ネットワークを構築するに至った経緯、体験を伺いました。

「ある住宅建築物件で、建て主から、地域にお住まいの特定の林業家の木を使って家を建てたいという要望を頂き建築することになった。
これまで地域の木を使って家を建てたいとは思っていたが中々それができずにいた。
この機会はとてもよい出会いとなった。」

「初めて、木を用意していただく際にどういう木がどれくらいいるのかということを林業家の方に聞かれ、全くわからなかった。
一つずつ図やリストを作ってお願いしていった。」

「曲がっている木を小屋梁に使うことを林業家に伝えると、そんな曲がった木を使うのかと驚かれた。
それまで価値が無い物として認識されていた木を価値あるものとして利用することができた。」

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つづいて、現在の活動について説明がありました。
建て主の家族の前で木の伐採を見てもらうツアーや、伐採した木が家になるまでのプロセスを伝えるワークショップだけでなく、切り倒した木材を使用しての机作りワークショップなど様々な活動をされているそうです。

最後に、受講生時代に木材コーディネート基礎講座でプレゼンした内容について発表がありました。
講師の能口氏より、発表内容の進捗について質問がありました。

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現在も、そのとき計画した事業を続けていて、完了した部分もあるとのこと。
引き続き取り組みたいとのことでした。

【次回の講座】

日時 :第10回2月10日(土) 13:00~18:00
第11回2月11日(日) 09:00~16:30
講師 :赤堀楠雄(林材ライター)
能口秀一(有限会社ウッズ・木材コーディネーター)
島﨑淳二(島崎淳二建築設計室・准木材コーディネーター)
場所 :近畿中国森林管理局
内容 :第10回ビジネスプランプレゼンテーション 13:00~18:00
第11回ワークショップ 09:00~16:30