08/19/2016

戸田昌志さん (資)戸田材木店

■平成26年度修了者

 

一つ尋ねれば、百返ってくる。

木が大好きで、とても勉強熱心。

関西人らしい巧みな話口調で、玄人にも素人にも熱心に木の魅力を語り続ける人。

戸田昌志さんのインタビューをお届けします。

 

「まちの材木屋」戸田材木店

 

戸田材木店は、大阪・茨木市に店舗を構える材木屋さん。

材木屋と言うと製材一筋や銘木一筋の材木屋も含まれますが、戸田材木店は戦後の建築事情の変化に対応し、木材以外にもキッチンやフローリングなどの販売もいち早く手掛けてきた、戸田さん曰く「まちの材木屋」です。

もちろん主製品は木材であり事務所に隣接する倉庫には所狭しと木材が並べられています。

 

以前はこのように、自社倉庫に在庫を持ち、材を乾燥させたり、目利きした材をストックしている材木屋が当たり前にありましたが、手軽に人工乾燥材が入手できる昨今では、戸田材木店のような在庫を持つ材木屋は珍しくなりました。

戸田材木店で扱われている材は主に木材市場から仕入れられていますが、特殊材などの注文の際には戸田さんの持つ全国のコネクションをつてに、製材所などの生産者から直接仕入れることも多いといいます。

 

 

取引先としては地域の大工さんや工務店がほとんどですが、近年では家を建てる予定の人やDIY好きの一般ユーザーも増えているそうです。

では「今後は一般ユーザーにも広く販売するためにインターネットでの販売も視野に入れていますか?」との質問に戸田さんははっきりと頭を振ってこう答えてくれました。

 

「例えば写真をパッと見て商品をポチっと押したら買える、買い物かごのような形でのインターネット販売は考えていない。今は昔のように木が身近にある生活ではないから、一般ユーザーの木に対する要望が自分達が考えている内容のものではない可能性がある。ネット上の画像だけで購入してもらうのではなく、電話やメールで何度もやりとりをして、木のことを理解してもらったり、実際に店に来てもらって木に触る、匂いを嗅ぐことをしてもらう。時間はかかるけれど、お客さん自身にも求めているものを分かってもらえるし、自分たちもどんな人達が木を求めているのかを知ることが出来るから。」

 

その言葉に、この顔の見える関係を目指す姿こそが「まちの材木屋」なのではないだろうかと納得させられました。

 

 

では、戸田さんにとって「まちの材木屋」としてのやりがいは何なのでしょうか。

「建築ということで地域の人の衣食住の1つに関われていること。かつ、それが木を通した関わりであるということ。木は自然の産物だから、1つ1つに特性や魅力がある。扱いは難しいけど、その反面とてもやりがいを感じる。そして、それを通してお客さんの喜んだ笑顔を直接見られるのが何よりも嬉しい。もちろん事業としてやっている以上は、利益を出して自社スタッフに還元しなければいけない。だから、利益を出しつつ、社会貢献もしつつ、事業を続けていく。これが今後の目標かな。」

 

自分たちの利益だけを考えていれば良いのだろうか。

 

次に、戸田さんが業務および業務以外に行っている木材に関する活動についても話を伺いました。

戸田さんは現在、ブログや紙媒体を利用した情報発信や、森や木材について学ぶセミナーやツアーを不定期に主催しています。

今回はこれらの活動の中からセミナーやツアーについて詳しく教えていただきました。

まずは工務店やそのお客さん、普段木に触れる機会の少ない子供たちを対象としたセミナーについて。

このセミナーでは戸田さんが講師となり木材が家の中で果たす役割や良さを伝えています。

戸田材木店のショールームで実際に様々な木材を見て、触れながら受講することが出来るのが大きな魅力です。

工務店支援の一環として、また、木に触れるきっかけづくりとして開催しています。

 

 

そしてもう1つは材木屋や工務店、設計事務所で働く人や、木材に興味のある一般の人も対象とした森林ツアーです。

この森林ツアーは、いわゆる森林療法のようなものではなく、山に生えている木が自分たちの生活の中で、木材として利用されるまでの一連の流れを知ることが出来るようなプログラム内容となっています。

木材の専門家である戸田さんの話を聞きながら、山・木材加工場・建築現場を見学出来る貴重なツアーです。

 

 

これらの活動について企画意図を尋ねてみたところ、2つの理由を話してくれました。

 

「1つは現在の日本の森林の状況、そこに関わる山側と、まち側である材木や工務店、消費者の現状を知ったから。その現状とは、まち側のそれぞれ得ている利益が山側へ戻っていないことによって、山が荒廃してきているということ。自分も含め、まち側の人たちにも、このままで良いのだろうかと考える機会を持って欲しかった。」

 

「もう1つは、お客さんが選択肢を捨てるための情報を提供したいと思ったから。今は、木材1つを選ぶにしても膨大な情報が溢れている。でも自分にとって何が必要で、何が必要でない情報なのかが判断しづらい。セミナーやツアーに参加してもらって、しっかり話し合うことが出来れば、お客さんに合ったベクトルを教えてあげられる。そうしたら後はお客さん自身で勉強も出来る。そうして自分で取捨選択して届けられた木材が、本当に山の木からできているなってことを実感してもらえるしね。」

 

そして、これらの活動を続けていく中で、店舗に来るお客さんにも変化が現れてきたと、戸田さんは話します。

 

「質が変わってレベルが上がった。レベルが上がったなんておこがましいかもしれないけど、ちゃんと木材の良さや、その木材が材木屋に来るまでのことを知っているお客さんだから、ちゃんと値段に見合った価値を木材に見出してくれる。」

 

4~5年前から続けられているという、これらの取り組み。実際に木に触れ、学ぶことで、参加してくれた人にはすぐに変化が表れると、戸田さんは言います。

そのため、今後もこのような活動を継続して続けていく予定だそうです。

 

 

自分の立場を再確認、そして

 

最後は戸田さんも受講された木材コーディネート基礎講座についてお話を伺いました。

まず初めに、この講座を受講しようと思ったきっかけを教えていただきました。

 

「自分の専門分野に特化した講座は他にもあったが、山から建築を含む木のこと全体を勉強したいと思っていたのでまさにピッタリだと思った。また、メディア活用講座(コピーライティング講座や写真活用講座)やイベント企画などのワークショップがあるというのも大きかった。なかなか勉強できる機会がないけど、重要なスキルだと思っているから。」

 

では、実際に受講した感想、講座から得たものは何だったのでしょうか?

 

「他の受講生との繋がりを得られたことが大きかった。受講生それぞれが、森林所有者や素材業者、木材利用者だったり、自分の専門分野を持っている。だから、1つの物事に対しても見方・考え方が違う。そこに気づけたのが良かった。木材に関する知識はもちろん、コピーライティング講座だったり、商品企画のワークショップもとても勉強になった。今でも、お客様や工務店向けの資料やプレゼンテーション資料作りに役立っていますよ。伝え方のスキルが上がることで、さらに木の魅力を伝えることができるようになったと感じている。」

 

 

最後は、木材コーディネート基礎講座を初めて知った方や受講を迷っている方向けにメッセージをいただきました。

 

「この講座には色々な受講生が参加するので、まずは自分の立場を再確認出来る。これまでと違った世界が見られるし、他の人たちと一緒にいることで新しい考えを生むことが出来ると思う。」

 

「講座は単に建築のことだけではなく、林業だけでもない。木材に関する幅広い知識と見解を学ぶことができる貴重な場。座ってただ聞いていたら終わりというスタイルの学習ではないため、実際に知見が身に着く実践講座を探しているならぜひおすすめしたい。各分野の専門知識を持つ修了生や受講生との交流も魅力です。」

 

今回、「僕は、まちの材木屋」と繰り返し話していた戸田さん。

材木屋と名乗るからには木に関することはなんでも答えてあげたい、知りたい。

そして、そのための努力は惜しまない。

そんな戸田さんの心意気に触れられたインタビューでした。

 


 

インタビュー・文 山内祥子(NPO法人サウンドウッズ)

写真提供     山内祥子(NPO法人サウンドウッズ)

戸田昌志