11/05/2019
【レポート】第3日木材コーディネート基礎講座(令和元年度)
今年度から兵庫県丹波市から埼玉県飯能市にフィールドを変えて
木材コーディネート基礎講座の演習を実施いたしました。
新しい場所に加えて、台風の影響による雨天および演習地の足場の悪化、
そんな中、カリキュラムを編成しなおして、無事に開催いたしました。
本日は、インターン生によるレポートを伊能、輪竹の順でお送りします。
【講座概要】
日時 :令和元年10月19日(土)10:00~17:00
講師 :井上淳治(准木材コーディネーター)
事務局:安田哲也
インターンシップ生:輪竹剛、伊能健悟
場所 :東吾野公民館、吾野原木センター、
雑貨カフェKinocaの製品保管庫
内容 : | 演習C 木材の計量・原木市場見学 | (10:00~12:00) |
演習D 木材のグレーディング | (13:00~16:30) | |
演習まとめ | (16:30~17:00) |
【講座内容】
<講座レポート1 作成者:伊能健悟>
前日の降雨により、山林内の歩行条件が厳しくなったことから、当初の予定を変更し、3日目に製品評価・原木市場視察、4日目に森林調査という順番に変更になりました。
事務局より全体の流れについて説明がありました。続いていよいよ講義です。
演習C 木材の計量・原木市場見学
講師の井上氏から丸太の材積・製材品の見方について説明がありました。
丸太の材積の計算は、一般的な円柱の体積を計算するのよりも複雑になります。
これは木が曲がっていたり細りがあったりして、仮想的な円柱では材積をうまく近似することが出来ないからです。
そこで日本では末口二乗法という特殊な計算に従うのが通例になっており、その計算の際に注意すべき「丸太の直径括約について」「材長による直径の補正」などについて、井上氏から図解・具体例を含めて解説をいただきました。
木材の評価について学んだあと、東吾野公民館からすぐの飯能市原木市場に視察に向かいました。
ここでは実際に原木市場で働いている方から、原木市場の役割・機能、具体的な作業の流れといった一般的な市場に関する説明に加え、飯能市原木市場ならではの地域的な特徴についても説明がありました。
その後、実際に原木市場の中を歩き、先ほど学んだ丸太の材積計算・芯抜きや曲がりといった丸太の特徴から、製材品にした時に表れる特徴などを推定し、丸太の値段にあたりをつけるといったかなり実践的な内容を学びました。
その中で丸太に貼られている伝票の意味や、買う人・売る人の考え方といった原木市場を見る際に必要な知識について説明いただきました。
演習D 木材のグレーディング
昼食を挟んだのち、井上氏の材が保管されている雑貨カフェKinoca隣の製品保管庫に移動して、丸太・製材品の観察・計量を行いました。
まず、受講者は四つの班に分かれ、それぞれの班ごとに丸太を選び、その丸太に関して観察・計量を行いました。
丸太の材長・直径の測定から始まり、材積の計算、節が出てきそうな場所のチェック、材の曲がりといった丸太の値段に影響してくる特徴を全員で確認していきました。
そして、それぞれの丸太に対して班ごとに木取りを行いました。
今回、細りもない直材というゆるい条件でしたが、それでも高い歩留まりを達成するのは難しく、木取りの奥深さを実感しました。
続く製材品の観察では、樹種はスギ・ヒノキ、乾燥手法は人工乾燥・天然乾燥、人工乾燥では低温乾燥・中温乾燥・高温乾燥のものが並べられており、それぞれの違いを実際に目で見て確認することができました。
同じ樹種でも乾燥手法によって色に差が出たり、含水率・ヤング係数も値に差が出ることを確認できました。
含水率・ヤング係数の測定では、測定原理の説明から入り、実際に手持ちの計測器で受講者が測定を行うという流れで進みました。
その際に「できるだけ平均的になるように測定する」「樹種によって設定・操作を変える」といった操作・測定の一つ一つの注意点も説明いただきました。
<講座レポート2 作成者:輪竹剛>
前週末に通過した台風19号の大雨で、今回演習を行う地域も河川の氾濫や土砂崩れなどの被害が起きました。
演習フィールドである山林では幸い大きな被害は無く、無事に講座を開催することができましたが、地域の中心を流れる高麗川(こまがわ)はこの日もまだ泥水がなみなみと流れており、降雨量がいかに多かったがわかります。
演習C 木材の計量・原木市場見学
この地域で産出される木材である「西川材」というブランドと、流通の概要について井上氏から説明を受けました。
今回の演習フィールドとなる高麗川に加え、入間川(いるまがわ)、越辺川(おっぺがわ)流域の山林は江戸時代からの林業地域であり、伐り出した木材(スギ、ヒノキ)は、筏で流し荒川を伝って江戸の町づくりのための建材として活用されてきた歴史があります。
江戸の西の川から流れてきた木材であったことから、「西川材」と呼ばれてきたそうです。
現在も木目が緻密に詰まっていて節が少ない良材というブランドが確立されています。
吾野原木センターは開設されて35年、西川材の林業地域の中では唯一の原木市場です。
最初に、直径1m近くあるスギの大径木を前にして、大野さんから説明がありました。
これだけ太い木材であれば、とても高い値段で取引されるのでは?と考えます。
大野さんの説明の中では、大径木は四方(全ての面)柾目のとてもきれいな柱が複数本とれるのがメリットであるが、現在は四方柾目の柱よりも無節の柱に需要があるので大径であるメリットが以前ほどない、とのことでした。
また、この地域には木目の見方やノコ刃の入れ方に長けた製材のベテランの職人さんはいるけれども、大径材を挽くための大型の設備がないために地域の中で大径材を製品化することが難しいという問題もあります。
こうした大径材も含めた地域材の活用のために、現在ある問題に対してどう解決方針を示していくか、これも木材コーディネーターの役割だと思いました。
大径木を扱う注意点として、材の中に金属(釘など)が入っていないか確認する必要があります。
製材する機械に金属が巻き込まれて機械が壊れたり大きな事故につながったりする危険性があるためです。
大昔にわら人形を打ち付けた五寸釘が刺さったまま釘を巻き込んで生長し、そのまま伐られて製材された木がある…という、おどろおどろしいエピソードもうかがいました。
演習D 木材のグレーディング
午後の演習では、一本の丸太の材積計算と木取りを行いました。
まず末口の直径を測り、丸太の長さを掛け合わせて材積を出します。
丸太の品質もこのタイミングで目視で見定めます。確認することは、節の跡が木口に出ているか、樹皮の方からも見て節の跡はあるかどうかです。
一つ一つの丸太の材積だけでなく、受講生グループが感じた内容も含めて発表し、それに対して井上講師からコメントを受けます。
枝が自然に落ちた跡と、枝打ちをした跡の違いの見分け方など、実物を見て理解できることが多かったです。
そして今回木取りの墨線を引いた丸太は、12月の演習で実際に製材します。
墨線どおりの木取りができているかチェックします。
どのような結果になるかが楽しみです。