【レポート】令和6年度木材コーディネート基礎講座第4回

第4回は第3回に続いて現地演習で、埼玉県飯能市での開催です。
本日もインターン生お二人にお手伝いいただき運営を進めていきます。
 
 

【講座概要】

日時: 令和6年10月20日(日)9:00~16:00
講師: 井上淳治(認定木材コーディネーター)
能口秀一(木材コーディネーター)
事務局: 井上峻太郎、安田哲也
インターン: 本田久瑠美、藤田広大
実施会場: 木工房「木楽里」(埼玉県飯能市)
井上氏所有森林(埼玉県飯能市)

 

【内容】演習2 木材の計量・木材のグレーディング手法

演習2-1: 原木の見方と市場の役割
演習2-2: 立木の伐採と造材
演習2-3: 原木の材積と価格の検討

 

【講座詳細】

本日の講座のレポートは、インターン生の藤田さん、本田さんの順番に掲載いたします。
 

■ 受講レポート (藤田広大)

 

演習2-1 原木の見方と市場の役割

 
昨日に引き続き井上講師と、本日から能口講師の2人で
吾野原木センターにて原木の見方や原木市場の役割について解説して頂きました。
 

 
今年は猛暑の影響で並んでいる原木は少ないとのことですが、
20cm前後の「杯・積み」一式売りや40cm超えの原木が並び、樹種は杉・桧・椹(さわら)・松でした。
 
井上講師より、年輪から特性や注目点を解説して頂きました。
杉は、伐採したてはピンク色をしているものも、
翌日に黒くなることがあるといったエピソードや、
椹は柔らかくフローリング材にすると目が浮きやすいという製品としての注意点も教えて頂きました。
 

 
原木買付けには競りと入札があり、最近はネット入札も行っているそうです。
井上先生は自分の原木を出荷したさいは必ず市場に行き、
買主とのコミュニケーションとるようにしているというエピソードが印象的でした。
 
どれだけネット環境が発達しても、
実物を見て対面でコミュケーションをはかることは、
一つとして同じではない個性あふれる木材だからこそより重要なのだと感じました。
 

演習2-2 立木の伐採と造材

 
次に、昨日毎木調査を行った森林に入り、立木伐採を見学しました。
伐採前に胸高直径・樹高測定を行いました。
井上峻太郎氏が、手際よくロープを掛けてチルホールをセットして伐採し、
午後から玉切り位置を検討するために、受講生は元から1m単位で直径を計測してデータを取りました。
 

 
「14cmより細材は4mのほうが良い」
「6m材を出せない林道は造らない」
という方針で山の整備を行っておられるとのことでした。
 

演習2-3 原木の材積と価格の検討

 
午後は、伐採した木をどのような長さに造材すると高額になるか、
班ごとに価格表を元に価格検討を行い、発表を行いました。
 

 
最後に、QGISの紹介と昨日を紹介して頂きました。
細かく地形が把握できることで、林道計画などを事前に検討するのに役立つといった実用例をご講義いただきました。
 

 
「個性ある材の情報発信をしていく」
また井上講師は、整った木ばかりではなく個性あふれる木も欲しがる人がいて、
情報発信が重要なのだということを話してくださいました。
木を育てるのみではなく、より多面的に森林の空間利用を行っているエピソードも
印象的でした。
 

■ 受講レポート (本田久瑠美)

 

演習2-1 原木の見方と市場の役割

 
第4回木材コーディネート基礎講座は、吾野原木センターからスタートしました。
 
原木市場は、業界川上にあたる林業事業体と業界川中にあたる製材所をつなぐ役割を担っています
市場の敷地内には、次の市場開催日に備え、品質や寸法に応じて仕分けられた丸太がはい積みされていました。
 

 
市場では、角材をとるのに最も歩留まりがよいサイズは高値で落札されますが、
大きめのサイズでも余り部分で別の部材がとれる場合も人気があります。
購入する丸太を無駄なく使うことができるか、
品質に関する丸太の目利きと同じく計算できることも重要になることがわかります。
 

演習2-2 立木の伐採と造材

 
次に、昨日計測演習した森林に行き、ヒノキを1本伐倒するところを見学しました。
 

 
倒したヒノキは樹高を測り、1mごとに胸高直径を記録しました。
 

 

演習2-3 原木の材積と価格の検討

 
午後からは、木工房で、班ごとに先ほど伐倒した木の造材パターンを考えました。
丸太の曲がりや傷の状態を考慮しながら、あらかじめ提示された単価を参考にして、
最も価格が高くなるようなパターンを検討し、1本全体の合計金額を発表しました。
 

 
4班中2班は同じ造材パターンでしたが、値段が異なったことで議論が白熱しました。
これは、片方の班では、元玉部分にキズがあったとして単価を安く見積もり、
もう片方の班ではキズがないA材として高く見積もったことが原因でした。
 
同じ木でも、キズの位置や曲がりの見極めで、そして川下のニーズを満たすかどうかで
造材パターンが変わり大きく値段に影響することを学びました。
 
造材パターンを考える際に、製材所にとって「買いたい木」はどんなものかを理解しておくのが大事だと思いました。
特に大径材の場合は、木取りが多種多様で覚えるのは大変そうですが、
いくつかの市場に人気のパターンを覚えておくことで、
造材パターンの引き出しが増えるのでは、と思いました。
 
今回の講義で、造材パターンが変わるだけでいくらの差がでるか分かり、
これまで「もったいない造材」ばかりしていたのではないかとヒヤヒヤしました。
 

 
最後に、無料ソフトウェア「QGIS」を利用した施業計画の実例の紹介がありました。
昨日のプロット調査と合わせて、森林の情報をデジタルでも管理することの重要性を学びました
 
また、都道府県ごとに森林に関するデータが公開されていますが、
公開状況はその自治体によってまちまちだそうです。
全国的にこれらのデータの公開、利活用が広まり、
森林資源の適切な管理と利用につながっていくことを願います。
 
 

【次回】

日時: 令和6年11月2日(土) 13:30~17:30
講師: 能口秀一(木材コーディネーター)
事務局: 安田哲也(NPO法人サウンドウッズ)
インターン: 本田久瑠美、藤田広大
開催方法: オンライン
内容: 製材の役割(1)
前編 : 11 木材のグレーディング
中編 : 12 木材の活用・カスケード利用
後編 : 13 木材の乾燥