【レポート】令和6年度木材コーディネート基礎講座第2回
第2回は、オンラインでの座学講座です。
第1回東京講座での森林林業分野に続いて、本日は後半戦です。
本日もインターン生お二人にお手伝いいただき運営を進めていきます。
【講座概要】
日時: | 令和6年10月5日(土)13:30~17:30 |
講師: | 井上淳治(認定木材コーディネーター) |
事務局: | 安田哲也 |
インターン: | 本田久瑠美、藤田広大 |
実施方法: | オンライン |
【内容】森林・林業と原木の品質(2)
前編 : | 5.森林の計測 6.立木の測定 |
中編 : | 7.原木の計測 8.製材品の測定 |
後編 : | 9.各種融資制度、補助制度 10.森林認証制度 |
【講座詳細】
本日の講座のレポートは、インターン生の藤田さん、本田さんの順番に
掲載いたします。
■ 受講レポート (藤田広大)
前編
現在、測量や所有者確認が行われていない森林が多く、
公図は不正確なものが多いそうです。
地積測量を早く行う必要性がありますが、コンパス測量がメインで、
正確性に欠けていると説明がありました。
最新技術の活用について、林業の現場で検討が進んでいますが、
GPSアンテナも谷底など密度が高い場所に山林入ると精度落ち、
ドローン空撮で樹高測量しても、資源量調査に必要なデータまでは取得できないなど
課題が多いそうです。
しかも、入手できたデータをどのように活かすか模索中であり、
最新技術を使いこなして林業に役立てるにはまだ時間がかかるとのことでした。
立木の調査については、毎木調査とプロット調査を比較して学びました。
調査項目として胸高直径がありますが、現場では「目通り直径」を使うそうです。
また、地上レーダー・3Dウォーカーといった計測器具を紹介して頂きました。
試験伐採が立木品質の把握に効果的ですが、
また同時に、収集した情報を発信していかないと高付加価値化につながらないと、
説明がありました。
中編
原木にするための造材では、
「あえて根張りを付けて元木を示し、欠点は切り取って市場に出す。」とのこと。
そういった一番有利になるように造材して市場に出すひと手間が、
原木の価値を上げると説明がありました。
製材では、乾燥による収縮を考慮して大きめに製材することや、
製材は帯鋸が主流の状況ですが、その昔は大鋸(おが)で挽いていた、と
「こびきさん」のイベント事例を紹介して頂きました。
後編
森林環境譲与税や「緑の雇用」についての現状に触れたあと、
森林の認証制度について、特に日本で設立されたSGECについて説明がありました。
森林認証制度は品質保証ではない民間制度ですが、
国の制度と連動していく必要があるそうです。
「買う側の意識を高める必要がある。
認証材の意義を伝える説明書を付けるなどアピールが必要」と対策を挙げていました。
また、植栽放棄地増加の対策として、国は天然更新を進めているそうですが、
天然更新の基準を満たせば本当に再生につながっているのか、問題提起がありました。
盗伐、誤伐を防ぐためにも敷地測量を行い所有者を明確にする必要があると、
最初の話に戻りました。
■ 受講レポート (本田久瑠美)
前編
前回に引き続き「森林・林業の原木と品質」について学びます。
川上から川下に至るまでの間、「木」は幾度も「測定」されます。
森林では面積を、立木の段階では資源量を、原木・製品の段階では材積を測定します。
ただし、山側になるほど正確に測ることは困難であり、
そのため、資源量の管理も難しくなります。
私は、これが木材の安定供給が難しい理由の1つだと考えています。
最近では、高精度で面積を測定する「GNSS測量」機器が用いられることもありますが、
谷地形では衛星電波が届きづらく、精度が落ちるそうです。
また、立木資源量を把握するために、航空レーザー・ドローンといった
リモートセンシング技術が導入されているが、運用上の課題が多いそうです。
中編
資源量や体積を計算するためには直径を測定する必要があります。
しかし表現ルールが異なっていて、立木の直径は「偶数括約」で表現し、
原木の直径は「2cm括約」で表現するそうです。
材積を算出する式が複雑で、慣れるために、参加者全員でいくつか設問を解きました。
「昔は、山の人も製材する人もみんな尺貫法で話をしていた」と井上講師。
昔には、川上から川下まで共通語があり、みんな容易に理解できていたので、
木材コーディネーターは不要だったのかもしれません。
「どういう山なら、どういう製品が取れるか。
それを考えるのが、木材コーディネーターの腕の見せ所」
材積計算も大切だが、得られる原木からその先の用途まで思い描くことも
木材コーディネーターの仕事だと、実感しました。
後編
林業周辺では様々な融資や補助制度があるそうです。
森林認証制度に講義が移ると、参加者の多くが関心を寄せていました。
世界初の森林認証制度「FSC認証」は、森林破壊を阻止するために誕生しましたが、
その後日本では、実情に合った「SGEC」という認証制度が設立されました。
受講生の中には「SGECを取っていたが、つい最近になって辞めた」という人もいました。
社会では森林を守るために森林認証制度が必要とされる一方、
コストや手間等に対してまだメリットが少ない等、様々な課題があることが講師の説明で理解できました。
【次回】
日時: | 令和6年10月19日(土)10:00~17:00 |
講師: | 井上淳治(認定木材コーディネーター) |
事務局: | 若林知伸(合同会社西川Rafters) |
安田哲也(NPO法人サウンドウッズ) | |
インターン: | 本田久瑠美、藤田広大 |
開催地: | 木工房「木楽里」(埼玉県飯能市) |
井上氏所有林(埼玉県飯能市) | |
内容: | 演習1 森林と施業と原木の品質 |
演習1-1 | 森林散策 |
演習1-2 | 森林測定 |
演習1-3 | プロット調査 |
演習1-4 | プロット調査まとめ |